「ささやん」のこと
図書館で何気なく手にとった本を読んでいたら、やめられなくなって閉館時間がきたので、後は借りて帰って一気に読んだ。
赤塚りえ子著『「バカボンのパパよりバカなパパ』という本。
その本に「ささやん」の文字を発見して、30数年前の記憶が鮮やかに蘇ってきた。
本文より抜粋(p149)
『パパは近所で呑むことが多くなった。事務所の近くに「ささやん」という行きつけの小さなスナックがあって、そこに集まる人たちと仲良くしていた。
マスターは元映画のカメラマンだったから、パパはここへ来て映画談義に花を咲かせるのが好きだったのだろう。実際、常連たちと一緒に何本もの八ミリ映画を撮っていた。
「ササヤンナイトフィーバー」「カマブランカ」「ミカンの大局」「奈良漬節考」…。
どれも、映画のパロディーのショートフィルム。なかには面白いのもあった。』
ハタチ過ぎ、東京で一人暮らししていた時、バイト先のマスターに連れて行ってもらった店が「ささやん」という小さなスナック。なにか炉端焼きのようなネーミングの店だが、ここのマスター佐々木さんが面白い人で、すっかり常連になってしまった。
東京ではトランペットの練習をする場所がなかったので、マスターに、昼間店が閉まっている時間にラッパを吹かせてもらっていいですかとの、無茶なお願いに快くOKしてくれた。そしてマスターはプロのラッパ吹きのJ氏も紹介して下さった。J氏の自宅までラッパを教えてもらいにも行った。
マスターを筆頭にこの店の常連客は本当に面白い人が多く、毎晩のようにバカな事をやって朝まで騒いでいた。
「ささやん」でバイトしてたホリちゃんはクラシックギターがめちゃウマ。その彼女や、大学生のシバちゃん。カメラマン志望の〇〇君、常連客数人で湘南までサーフィンをしに行った事もあったし、富士急ハイランドへ合ハイ(今は死語だろう合同ハイキングの事)にも学生になりすまして行った。
「ささやん」に赤塚先生が呑みに来られる事はマスターからもよく聞いていた。まだかけだしだったタモリ、所ジョージなども来ていたよと、嬉しそうに話すマスター。「下落合焼き鳥ムービー」なるものも作ってたっけ。
店で16ミリフィルムの上映が、深夜番組11PMにも紹介されていた。
東京から離れてもマスターとは年賀状のやり取りは続いていた。が、何年か前に田舎へ戻って他界されたと弟さんから知らされた。
赤塚不二夫先生とは通じるところがあったんだと思う。映画が好き。とにかく面白い事が好き。人を笑わせたり、驚かせたり、変わったことが好きだった。
「全身ギャグ漫画家」の赤塚不二夫先生は、バカに徹して、真剣にバカを演じた。
懐かしい思い出とともに、今自分はあの頃のように「バカ」になりきれるように生きたいと思った。
真面目に生きようとすると、つまらなくも窮屈にも思える。
バカになるのは利口になるより難しい。理屈屋じゃない。
自分を捨て去る事なんだから・・・
「これでいいのだ!」
といつも思えればいいのだ。